社債利回り16%、コアウィーブ・ショックが映すAI投資の「借金依存」
2026.10.25
コアウィーブとはどんな会社か
コアウィーブは、米国に拠点を置くAIクラウド企業である。特に、AI半導体を搭載したデータセンターをAI開発企業やクラウド大手に貸し出す「ネオクラウド」の先駆けとして知られている。出資者にはエヌビディア、シスコシステムズ、大手ファンドのブラックストーンなどが名を連ねている。
この企業は生成AI向けデータセンターへの巨額投資を行う一方で、その資金を大規模な社債発行で賄ってきた。2026年6月30日時点での債務は約356億ドルであり、オペレーティング・リース債務約163億ドルを加えると、合計で約519億ドルに達している。受注残は約1040億ドルにのぼり、顧客にはマイクロソフト、OpenAI、Anthropic、ジェーン・ストリートなどが含まれている。
10月14日以降に何が起きたか(社債・株価)
米国時間の10月14日、コアウィーブの社債価格が急落し、株価も約15%下落した。特に表面利率9.75%の2031年償還債の利回りは15.78%に上昇し、2032年償還債も14.8%に達した。この日、2026年4月に発行された2031年償還債は額面1ドルあたり0.784ドルで取引され、利回りが16.2%に達したとの報道もあった。
また、5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドは一時1140ベーシスポイントを超え、この時点でのデフォルト確率が約63%とされる水準になった。株価については、15日にも一時8.3%安となり、2025年5月以来の安値を記録した。10月の下落率は36%に達している。
世界の市場への波及
コアウィーブの状況は、米国市場だけでなく、世界の市場にも大きな影響を与えた。特に、同日のナスダック総合株価指数は511ポイント安となった。さらに、10月15日には日経平均株価が1日で3318円(約5%)下落し、歴代3位の下げ幅を記録した。
同じく韓国のKOSPIも7.57%安となるなど、アジア市場にも広がりを見せた。この悪化の要因として、中国の半導体メーカー長鑫存儲技術(CXMT)が10月10日に年末を目途に最先端の高性能メモリー半導体を供給すると発表したことが影響を及ぼしている。また、15日の東京市場では国債が買われ、リスク回避の動きが見られた。
問題の核心は需要ではなく借入
IGグループのルドルフ氏は、今回の問題は需要よりも借入(資金調達)の方法にあると指摘している。この状況では、例えば9%の金利で借りた資金の最大収益率が5%であれば、事業を拡大するほど企業価値を損なうことになる。つまり、根本的な問題は市場の需要不足ではなく、借入のコストに依存していることが明らかとなっている。
さらに、世界の主要なハイパースケーラーの間でも、AI投資資金を社債で調達する動きが広がっている。これは、世界的な金利上昇によって、借入でデータセンターを建設するビジネスモデルが難しくなっていることを示唆している。ロイターは「市場は、AIの需要と収益性のあるビジネスモデルが別物であることに気づき始めている」と報じた。
楽観論
一方でコアウィーブのマイク・イントレーターCEOは、「受注残は、すべての債務を十分に上回る裏付けになっている」と述べており、楽観的な見解を示している。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOもコアウィーブについて楽観的な姿勢を持ち、「資本コストは実際に下がっている」との見解を述べた。
JPモルガンは、借入が多いのは急成長に伴うものであり、事業の採算が悪化しているわけではないと分析している。また、ゴールドマン・サックスは10月19日にコアウィーブの投資判断を「中立」から「買い」に引き上げている。過去の例として、2025年1月に発生したDeepSeekショックではエヌビディア株が1日で17%下落したが、その後に回復している。
警戒論と今後の焦点
専門家の間では、「約4年続いてきたAI相場の熱狂は、終わりの始まりを迎えつつある」との見解が浮上している。ダイヤモンド・オンラインもこの傾向を支持する一方で、データセンター企業の連鎖的なデフォルトは直ちには発生しにくいとの指摘もある。
また、中国のAI進出が米国の優位を揺るがす要因として挙げられている。米OpenRouterによれば、2026年7月半ばには米企業が処理したトークンの58%を中国製モデルが占めている。日経ビジネスでは、今回のショックはAIブームにとって「さざ波」に過ぎず、実際に注目すべきは11月3日の米中間選挙後のAI規制の可能性であると論じられている。
さらに、月末にかけての大手クラウド各社の決算が好調であっても、コアウィーブの借入コストと収益の逆ざやは解消しないとの指摘もあり、これが今後の焦点となる可能性がある。